ESSEY
時々邦楽の小話を一つ書いていきまーす。
日々邦楽 第19回
3つの「城ヶ島の雨」
雨がふるふる、の歌い出しで有名な「城ヶ島の雨」は大正2年(1913年)10月に北原白秋作詞、「どんぐりころころ」などで著名な梁田貞により作曲された楽曲が有名です。28歳の白秋は3つ下の隣家の若く美しい人妻との不倫騒動で収監され、人気も地におちて、、そして出獄後に当人と結ばれて三浦半島にて再起を図り始めた頃の作品です。(お相手もかなり小悪魔な性質のようで14ヶ月後には離婚しますが、、、)冒頭の絶望からの好転ぶりの詩情が曲にも反映された名作。三浦半島のご当地ソングとして今もなお愛唱されています。(私のイチオシは美空ひばりさんが1963年に歌われたもの) 「城ヶ島の雨」は他に2つの曲が書かれています。一つ目は「赤とんぼ」「ふるさと」で有名な山田耕筰が11年後の大正13年(1924年)に制作。
当時欧米で流行していたクラシック音楽の要素をふんだんに取り入れて、この詩じゃなくてもよくね?と思ってしまう曲に聞こえました。作曲年代は山田氏がN響の前身となる日本交響楽協会を設立した頃なので、世界と勝負したいという気負いに溢れていたからかもしれませんね。
二つ目は橋本国彦氏によるもの。橋本氏は弘田龍太郎より一回り年下ですが、東京音楽学校でチェロを専攻し、作曲し、ウィーンに国費留学し、帰国後は母校で教鞭もとる。という点で似た経歴を歩んでいます。唯一違うのは戦時中に芸大の教授職であり、軍歌等を精力的に制作したため、公職追放の憂き目となったこと。心労がたたり46歳若さで胃がんで亡くなります。才能あふれた作曲家であり良き指導者だったそうで弟子として伊福部昭など素晴らしい作曲家を輩出しています。
フルートの一節からはじまる楽曲は、城ヶ島海岸の夜明けの雨から少し青空が見えてくる情景描写に優れた繊細な印象。特にフルートのパートの装飾音の指定が細かくあり、これは弘田龍太郎が芸大助手教授時代(橋本氏は大学生)に携わっていた日本音楽の五線譜化作業に何らかの関連があったからかもしれないと想像しています。
橋本国彦氏の晩年の代表作には日本国憲法発布を記念した交響曲2番という作品があります。驚くほど緻密、かつ日本の再興を願う情熱にあふれた作品で、零戦やその後の工業大国として成功する日本の礎を作った当時の人の力に圧倒されます。
2023年5月12日
Pick UP!
イチオシ公演

料亭 泉岳寺紋や
篠笛演奏パフォーマンス
2023年5月27日 18時10分ー 19時ー 20時
2023年6月10日 18時10分ー 19時ー 20時
仇討ち時代劇で有名な赤穂浪士の菩提寺である泉岳寺のお隣にある「紋や」は富山から直送された新鮮な魚と野菜などの食材を中心とした創作懐石料理です。和風ながら、お席はカウンターから個室魔で全席椅子席なので靴を脱いだり正坐せずに美味しいお料理とお酒を楽しむ事できます。
ここでは土曜日に箏と尺八と笛が週替わりで演奏パフォーマンスをしています。
ミュージックチャージ料はありませんので、ぜひ美味しいお料理とともにお越しくださいませ!
紋や WEBサイトはこちらから
JR山手線 高輪ゲートウェイ駅 徒歩10分
都営浅草線 泉岳寺駅 徒歩2分
お問い合わせはこちらから

強くしずかに響け我が調べ
6月15日(木) 19時開演
豊洲シビックセンターホール
全席自由4000円 (25歳以下は2000円)
日本音楽集団第239回定期演奏会
作曲家にとって作品は我が子のようなもの。
2000曲以上に及ぶ日本音楽集団のレパートリーを担ってきた日本音楽集団の所属作曲家達がこれぞ!と思う自薦の曲を特集します。私は高橋久美子氏の「起」で龍笛を福嶋頼秀氏の「三味線トリオ・コンチェルト」で篠笛を演奏予定です。
演目
『鬼魂』作曲 相澤洋正 『己 ~ki~ 1.起』作曲 高橋久美子 『竹桐之賦』作曲 川崎絵都夫 『華韻』作曲 篠田大介 『トポロジカルスペース 第三番』 ※委嘱初演 作曲 秋岸寛久 『三味線トリオ・コンチェルト9つの色は友と未来をかけろ!』 作曲 福嶋頼秀
お問い合わせはこちらから
NEWS
最新情報
2023年7月26日 | 新宿オペラシティリサイタルホールにて声楽家、青山恵子氏のリサイタルに出演します。詳細はもうすぐ |
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2023年8月15日 | 東京アーツカウンシルより助成金決定!上野精養軒にて自主コンサート「大正期からのメッセージ」を開催いたします。 |
2023年9月10日 | 朗読コンサート「源氏物語」の音楽を担当します。 |
Memory
公演記録